最高裁判所第三小法廷 平成元年(行ツ)85号 判決 1990年11月20日
横浜市港北区篠原台二四番四号
上告人
藤村瑛二
東京都千代田区霞が関三丁目四番三号
被上告人
特許庁長官 植松敏
右当事者間の東京高等裁判所昭和六三年(行ケ)第一九号審決取消請求事件について、同裁判所が平成元年二月二八日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告人の上告理由について
原出願の願書に添付した当初の明細書又は図面に、本願発明の要旨とする技術的事項が記載されているとは認められないとした原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、違憲をいう点を含め、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。
よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 坂上壽夫 裁判官 園部逸夫 裁判官 佐藤庄市郎 裁判官 可部恒雄)
判示事項
原出願後に原明細書及び原図面について補正がされ、その後に分割出願された発明につき、分割出願に係る発明は、原明細書又は原図面にその技術的事項が開示されていることを必要とし、原出願後に補正された明細書及び図面のみに基づいて分割出願の要件を判断すべきではないところ、本願発明は、原明細書及び原図面に記載された事項の範囲外の事項を構成に欠くことができない事項とするものであるから、原出願に包含された発明であるとはいえないとした審決の認定判断を正当とした原判決を正当として是認した事例
(平成元年(行ツ)第八五号 上告人 藤村瑛二)
上告人の上告理由
上告理由書記載の上告理由
一、 序論
(一) 本件は 裁判所に調査官がついて居る事件であるから 当業者ろしその知識水準と範囲を全員の前提として 準備手続或は条論が行はれるべきである。
しかるに判決をみると、当業者の無昇で議論前に当然の前提となり、或は常識的になつてゐる工学的概念や思想、又は表現の習慣に無知の者を相手に訴へてゐた感を負れない。
更に又 広く社会で習慣法的な意義を有して社会の公準となってゐる、特許庁制定の「審査基準」を無視する倫をすゝめつでとき、不法行爲をなしてゐる。
これ等のために、むしく用ゐられてゐる、用語の概念規定を掲示し、且 前記「審査基準」を明にする爲に 若干の参考資料を書証のごとく添附して説明やむるをえない。
(二) 概念規定
(イ) 通信の意味
呼者が自己の情報を或る種の手段を媒介して相手方(被呼者)に伝へることであり、当然工学的枝術的に手段を構成する場合には話さんとする者( 省)とその相手方には夫々の閉じる端末装置が具へられてゐる。
(ロ) 通信系と交換系の相違。
左図のごとく、甲、乙の通信当事者の関
(甲者<省略>乙者)
に通信の媒体Aをおき これを介して通常行ふもので 甲の端末器-A-乙の端末器を一つの体系としての装置配置の体系的配置とみるとをられが通信系である。
然るに右媒体Aが複数ルートにふる場合即さ甲者が相手乙1、乙2…乙m者に通行せんとしその通信媒体を撰択して歓する相手乙m者に接続する装置の系が 交換系である。
(甲1<省略>乙m)
つまり右の図のごとく 媒体Aを二つに別けA1とA2の間に 撰択接続のための系Bを置けば、Bの機能を論ずるには甲の端末、その間の媒体A1を閑却し又乙mの端末、それとの間の媒体A2を閑却して論ずるのが当業者の在り方であって、説明図を用いる時は甲側の入線端子 等と乙m側の出線端子 等を示して入側出側へのびてゆくらとを暗系するにすまない、Bの技術上の分析討論は全て、入とZの端子の間で行はれるから、 りに交換系について発明を切すとすれば、入と出の端子を暗示するのみで甲と乙mと 端末なで表現するのが当然である。面もそれはBが交換樓結後に自動切断をれて通信を中絶する事を意味するものでなく、交換後そのま々保持されて 通行ルートの一璟たりうることが暗然の了解事項であり、中絶をするはらは、特別にそのことを指摘言及しなければならぬのである。
郎で参考一の目次に示す特に「スィツチングと回線綱」と言ふ語は、交換(スィツチング)系と通修ルートが一応別箇のものであることを意味し「回線綱における交換桟能の発生」は尚、その区別を明確にしてゐる。
又該資料の70頁図4-12は、LLNと する物にSUBとして 印(端末逆受話器)を示してゐるがこれも直に電線で、交換代桟の一要素としてSUB と連るといふ意味ではなく、LLNの入端子を暗示するだけである、 との間には器 器桟が介在することが必要で、実線で結んだことが も LLNの一構成要素であると主 することではない、これは当業者間の常識である。
又出線側には、何一つ端まの図示はなくこれは想像することによって 媒体ルートをへて、着修者た通信しうつことを意時する。
又参考二に依っても全称のことを明にし得る。その132頁の各国をみても、出線側は着行端末を想像させるに止り、入線側の 印付、「コチラ側が入線端子」を暗示して居るにすまない。
(ハ) 情報と、信号と、信号電流の違ひ。
桟とが概念、思想、感情として表象する物を現金情報と呼んでゐる。
この一次に対応させた記号を信号とよぶ。 一記号及び復合記号何れも信号で、その中には文字記号、音声記号があるこの記号の一ケに対応して、おれ夫に応いて変容させた電流が信号電流である。
送者甲が出す信号によって電流を変容する技術的手段が送り側にあり、これを元の信号に〓す技術ゐ手段が受け側にあり、送者甲の記号が乙の所で戻って再現することが電気通信の要件である、然し、これは甲の情報が乙に伝はつたらとを意味しない。その為には、同一の信号について、同じ概念を表象する、信号対情報の一対一の対応のルールを、甲者と乙者とが共有しなければならぬ、この共通ルールが、原告が准備書面中に指摘した、両者の約束事であり、社会的要項で技術事項ではない。
発明は技術事項にのみ線はるものであるから、送者甲の提示提出した記号によって電流を変更し、信号電流を媒体を伝はらせ、ルートの撰択接続を行い、再び媒体を伝はらせて、受者乙の、記号(信号)復元手段によって復元する、この間の技術的手段に関するものが、通信システムである所、媒体を伝はらせる手段に関するものが伝送技術(の発明)である。信号電流の復元作成に関するものが端末桟器(の発明)であり、撰択接続の技術に関するものが交換方式(の発明)であることは、当業者にとって裹に明かである。
これを要するに、情報と記号とは一対一1記号と信号電流とは一対一の対応を有するが天等は別とのものであること、又従って、交換系とは、交換接続した後に本体情報の信号電流が通過してゆくことが当業者間の前提となっており、交換接続後に本体情報の信号電流を通過させぬ技術的手段が在ることが指摘されれば格別、然ら れば、通過するのが当然のこととされてゐる事をのべた。後者の証査として、参考一、又は二、又はその他の書物の図面と記述の仕方を指摘する。
(三) 甲十二号証に関する審査基準の意義。
すでに広く公示されて出願人と特許庁がそれによって明細書を作成し審査し内外の無体財産がその型式に則って保存登記(特許登録)される以上。社会の公準として濫りに 視すべきものではふい。
社会の秩序の一部として、又は存在し、商法に係はる慣習法以上の重要度がある。
将来、該基準が判決によって変へられた例もあり、「悪法も立法也」なる態の強制力を持たゐが、変へるについては不合理なる理由の説示がふければふらず、その後は、基準の改訂が速に公示されふければふらぬ、何ら原判決のごとく不合理理由が説示されず、被告も別に改訂するでもなく(基準を管理する審査基準室にその動 などふく) らに提示された基準を被告及判決が踏み〓つたことは、社会秩序の破壊であり不法行為である。
審査基準は、特許庁審査基準室の言によれば、特許法の特許法 趣旨より演繹した運用則で特許法の具体化であるから、これを破ることは特許法に違反することである。
甲一二号記は「手引き」であるが、序号三及四として、本物の審査基準を提示する。これによれば、原告側書面における分割要件の主張の、基準における根拠は少しも誤って筈らず、分割発明の包含は、原願の補正明細書― に原告甲二号証は、補正却下不服の訴訟が勝訴した、確定明細書である―について調べるべきことに誤りはふい。
その理由は補正により、不要或は範囲の誤解を招くなで有害な事項を削りおとした補正書によって、原願からなくなつた発明について、分割出願をさせない爲である。
(但し本件分割については、補正の原願明細書も最初明細書も、発明の構成図は全く同一のもので、その動作の説明の誤りを正したから、変りはふいのだが、原判決が誤つた原願最初明細書を用ゐたことはその中の所言〓句を取り上げて、分割要件の欠落を唱へるに役立つのかもしれふい).
参考三、[1]-16-2頁、4項より[1]-16-3頁十三行までを参考されたい。
同じく参考三の[1]-16-6頁5・21項より仝[1]-16-7頁12行までの示すとおり原願申のものと分割-た のとの、同一か否かは、原告主張のでとく、「実質的に同一」の点について判断しその基準は「発明の同一性に関する審査基準」(参考四)によるのである。
所で参考四の[1]-14-7頁に示す に、同一性の判断の原則として、「実質的に同一」の場合が五ケあり、このケースが、実質的に同一で原則の範囲となる。他方実質的に同一でふくとも形式的に同一なつものを同一と判断する「特則」があり参考四の[1]-14-57に示される。(参考三)によつて分割の包含の審査では、原則に入るもののみが「同一 包含」とされ、形式ゐた同一 特則に入るものは包含とはされふい。他方先後願の同一では原則に入るもの以外にも「特則」に入るものが同一とされ、斥けられる、故に分割の要件の、包含されるか は狭くなつてゐることが解る。
本件分割発明の、包含か は、すでに甲徴書面で主張したでとく参考四の〔型2〕について論ずれば足りるのである。[1]-14-7頁下六行~下一行の示すとおりである。
判決文の該当箇所と分割出願の箇所を対比する細論は本論になす。
(四) 判例の提出。
本件判決の誤りを指すため、参考五として二つの判例を提示する。
原願の一部と分割出願した構成とが、仮りに補正とみた場合、要旨変更になるか否かの観点から眺めるために参照する、東京高裁昭和三二年(行ナ)三三号の提示と。
自 事項の否記載と分割要件の充足の観点昭和五三年東髙、昭和四五年(行ケ)五〇号の提示である。
この詳細は二、本論にのべる、が、原判決が判例違反であることは明らかである。
二、 本論。
(一) 原判決は 判決に影響する経験則違反がある。
既に序論で示したごとく、社会的公準となつてゐる、特許庁制定の「審査基準」に反した判決であり、当該「基準」が特許法の具現とすれば、法令違背があると断じて差支へない。 も基準は法律程の拘束力を持たぬ故に、不合理なる あれば。その理由を説示して不採用になすべき所。何等不合理な点を提出さぬに不拘、基準を省みないのは、分割要件の実質的同一性のケースとして擧証された、「型2」 甲十二号証一七九頁及七九頁を引用される事を嫌つたものと考へするを得ない。当該実質的同一の原則のケースに参考四の[1]-14-7頁の「型 」である事は序論でのべた。
所で、 本件発明の構成は、甲三号証第4-1図に示す所であり、(原願発明の一部)仝第3図の(1)CD、(2)A局、B局、C局、D局のCSをま 、接続したものであり、スイツチSを き識別器工を、夫との局のCSの出線に続ぎかへたものである。
識別器工については、これが 把接続用の機構ではたく、終訟後の解放のためであつて当業者にとつて常識的に 用するものだから本件分割発明の要点から外して考へてよく、この原告側の説明(甲九号証3頁六~一〇行)に対し相手方の はない。
又CS内Sは、出中継給を他の用途に転用するための、本願構成の新用発明であるから、これを省いたことは、問題にふらふい。
さらすると、4-1図の構造は第3図の一部にそつくり入つて居ることが図の比較から明らかであり、一もの要素の機能に異つたものがあるがゑかが問題である。
しかるに何の な異つた所もない、この点については、次図の補充(二、三日中に提出)に下で しくするが、否願の詰る部分か一つの交換系であり、入り端子に何が接続されるか、出の端子(D局のRSの、被 者工に相応する端子)に何が接続されるかは顧慮されることなく交換システムとして程 接続の様的を果し、特別の解放措置を操らぬ限り、接続以後の信号電流のルートは保持されることは明らかであり、(特に接続の後に連に自動解放する記述は何処にもふい)、従つて爾後的な、余計な信号電流を流さうとすれば、信号形態が通合する限り、流しうるものであることは、当業者にとつこ余りにも簡明なことである。
従って 原願の信号線システムを、原願発明に於ては接続のみに用るたことと、本件発明に於ては接続用信号電流後の、余分な本体情報用信号電流を用ゐること、とは
異なる用途の相違であって、後者の場合が、分割出願の対象である以上、用途の相違のみが、分割要件の判断の要点になるのでゐる、しかるにこの判断は、甲十二号証、参考四の「型2」又は例2、例3、([1]-14-11及12頁)のごとく、実質 に同一なるケースに入るのである。
(添付書類省略)
平成元年七月一九日付上告理由補充書記載の上告理由
(二) 原判決には判決に重大な影響を及す憲法違反がある。
前項(一)のごとく 審査基準(甲十二号証)によつて、本願発明が分割要件を充足してゐる所原判決は殊更に社会的公準こなつてゐる該審査基準を無視し誤った結論を導出した。
この意義は、万人がそれによって自己発明の を守りうるのに独り原告のみにその 原を失はせるものであつて一四條法の下の平等の條項に背き 三二條 公正なる裁判を保障する條項に背くものである。
本理由書本論(一)のごとく、分割要件の判定は甲一二号証178頁、参考三[1]-16-3頁、に示す孫に、「発明の同一なの判断基準」(参考四)第一二号証73及79夏に依るものであり、それによれば「実質的に、原願の該当部分の発明と分割の発明とが同一であれば、前者に後者か包含されてある」と見做すのであり、本体は分割要件を充足してゐるのである。
特許庁の公示する審査基準に格別な不合理があればその理由を説示し、被告も即刻改めるべきところ、判決文にそれがふく、特許庁審査基準案もその動きも意図とない。
従つて、正当な理由なく、審査基準を棄てて独自の理論を展開しハ独自の適用を行つたもので、正しく法の下の平等を躊躇した。
(三) 原判決は 判決に重大な影響を及す判例違背がある。
判例(参考五、二一二七-九頁)53、8、30与 十三部45年行(ケ)50号によれば、当業者にとつて自明なことで、記載を想像により補つて考へる 場合は、分割は原願に記載あったものと認める、事が明らかである。
本件分割発明は 甲二号証第三図(原願最初明細書第三図と同一)に於て、CD以下をそっくりその構成とするものであり。CDの入力側(即ち原願第3図のCDのR側)は、直接間接に呼者Uと結合することを意図することは、原願のCDがRを介して、呼者Uと直接間接に接がる以上、既に示されてゐる。
その上、線路的手段が余分なる(撰択接続以後の)信号電流を通流し得るといふことは、相隣接する電話局に於て、上位局より下位局に出線番号を通知する動作(……)について出線番号通知(甲二号証6コラム24行以下27行)の動作によって原願発明の線路的手段の機能の一として記載され、本件分割の交換系が原願システムにおける信号専用線系の交換系と、その点(余分信号電流を流すことができる)は同様である。
以上 本件分割発明は 原願の信号用交換系に記載され、或は容易に当業者が記載されたものと同様に、自明に補ってよのるものであるから、原判決が前記判例に違背してゐることは寔に明らかである。
(四) 原判決には、判決に重大な影響を及す判断の齟齬がある。
原判決(26丁裏四~六行)は当業者としてあり得ふい判断の誤りがある。別の点よりみれば無知即ち経験則違反がある、即ち
「本願発明は、……(発呼者と被呼者との間における通話等の情報である)本体情報を伝送することを必須の『構成要件』とするものである」とは一体何國語であるか。
参考四(1)-14-4頁、9行目、「構成」とは、目的効果と別の、工学的装置とその組合せを云ふのである。本願発明は交換系のそれであり、通信系に用ゐられるものだが、「本体情報を伝送する」のは交換様の構成ではふく用途である。又伝送とは伝送技術に属することで、交換系の発明とは別の技術である。
交換系の目的は撰択接続と爾後信号電流のための通路保持であり、必須の構成要件は選択用機器とその組合せ、保持用機器と組合せであり、端末装置ではふい。これは当業者の常識である。
前記判決文は、最初は端末が交換系に必須な構成とは云なず、先づ端末が通話に必要な構成であると云い出し途中で『交換』なる語の位置に『伝送』をスリかへ代入し終りでは交換装置には、端末との連結が必須の「構成」である等と誘導しこの断定から、一時者等の端末との連結原願接続信号用交換系に記載されないから、「必須の要素」を欠くと結論したものである、しかしこの前提が既述のごとく判断として齟齬甚しく思想的に無荼苦荼だから、結論も誤りである。
判決文は常に、目的用途の記載無いことを構成が記載されてゐふいと云い致し、又目的用途の記載されてゐないこと自体が分割発明の原願発明に包含されてゐない、との論法を使用するが発明の同一性の判断基準は、「日ゐ用途が異つても構成が同一な二発明は実質的に同一である」とする。
(五) 原判決には判決に重大な影響を及ぼす経験則違反がある。
判決文28丁表三行目「発呼者Uの信号送出について何分説明がふい」は工学技術上の 知を現付してゐる。原願の出願及以後の二回の特許訴訟に於て、発明未完成、 公知技術等の拒絶、抗弁等存在せず、原願は特許公告になつてゐる。当然ながら、これは何十年も以前からの「短縮ダイヤル」サービスの技術である。加入者がこの契約を結べば各自に局内レヂスタが割当てられ、自己の使用頻度の髙い相手加入者番号が索引番号1.2.3等を附して記憶される。加入者がブッシュフォンの(1)をおせば、索引番号(1)相手加入者の正規番号が、レヂスタから送出される。このレヂスタが原願発明のRに当る、短縮サービスでは、レヂスタが通話線から、爾後切離されるが、そのことにしておけば、何回でも(1)を押すごとに被呼者に、被呼者自体の番号が送達される。 当該サービスにとつては一応無意時であるから切離される。
この技術をみれば、著通人であつても、原願発明のレヂスタR又は前記短縮ダイヤルサービスの為の局用レヂスタが、発呼者の代行者であり影武者であることは直ちに了解できるであろう。
他方 CDは原願に於て、数字コードに一対一に対応する信号電流をRより受けて、以下に送出することが明記されてゐる、CDの入力電流が、本体情報に付已した信号に、更に一対一に対応した信号電流であるか、将又被対応番号に対応した信号電流であるか、CDが機械である以上、一々区別が解る等はふい。爾後故に原告の所謂「合分毛 」が入力すれば、機械的に対応するし、又対応しふいといふ記載はどこにもふい、CD以後のルートは、保持されて余分信号(出線番号に一対一に対応する信号電流)の伝送に供しうることは示俊されて り、又然 に示俊がふくとも交換系に格別の解放動作をさせぬ限り接続以後何分 の爾後の信号電流を流すことを用途することは当業者の参考書、文献に於て公知のことである。
而してCDは、その入力端子に数字コードに対応した信号電流が入力されれば、幾何就でもCD以下に、適合した形態の信号電流を送出する以上、原判決30丁裏四~七行のごとき「原明細書図面には本体情報を交換信号が流れる信号図路に結合させる所要の装置について何等の記載がふい」とは妄断も甚しい。
Rが発明者の代行者であり影武者であり、発呼者の位置が示されてゐる、CDは、数字つ 信号の入力を受けいれる装置である、とすれば、本体情報に一対一に対応した信号かありその信号に対応した信号電流が(本体情報信号自体が数字列ならば)CD以下の交換システムに本体情報用信号電流が送出される構成は寔に明らかに記載されたことである。CD 判決文の所謂「結合する装置」である。
以上のでとく・既述の判決文には、当業者の経験則を遠脱した誤りがある。
(六) 原判決には判決に重要な影響を及ぼす経験則違反と判断齟齬がある。
当業者が特許申請を為すに当って当然の前提として準據する、特許庁発行の発明の同一性の判断基準は、一方に於て当業者と特許庁と、又当業者間の(侵害問題に関して)習慣則であるから、これも亦経験則である。
判決文30丁表七行、「明細書中に交換接続用情報を伝送させるべく構成された信号回路も、直さに本体情報をし伝送させることを意図した開示を行ったと認められない。」の「意図」とは目的を意識し企てることであって、構成ではふい、原願における構成の未開示ではなく目的の未開示が発明の同一性否定の基準になる等何処にも規則はふい、夫故当業者間の経験則に違反した判断である。
又原判決は29丁表下四行より仝裏下五行までの原告上告人の主張を引用し、「余分電流に本体情報をのせる否かは呼者被呼者間の約束事である」との主張は「本体情報をのせる電流を信号回路に結合させる装置を必要とする(30丁表五~六行)」所、「その装置について何等原義に記載がふい(30丁裏六~七行)」し、「信号回路の開示には、本体情報を伝送させる意図がない(30丁表下三行)」から、「通信回路の接続後の余分信号電流に本体情報を載せることは発呼者と被呼者間で予め定めた約束事であるとはいえない」し「後にその約束事があったとしても通信後における常識ではふい」としてゐるが、全くの判断齟齬で、正直何を云ふのか當上告人には見当がつかふい。
右上告人の主張は原告書面(四)5丁表三行目以下にあるのだが、この解釈には本上告理由序論-概念規程-での情報とか信号、信号電流の意味を判然区別することが前提として必要だがその区別ができてないから右のでとき誤を犯すのである。
発呼者が「あす」といふ概念を表象する。今日の翌日を意味するその概念には「明日」なる文字記号、「あす」なる意声記号が対応する。此等は信号であり、この信号に「一対一」に対応して信号電流が形成されたり、音声による波が形成される。これが伝けらて被呼者側の耳元に「あす」なる音声、或は、眼前に「明日」なる文字が復元したら、今日の翌日なる概念が被呼者に伝はるのか、それは伝はらないのである、両者の間に”日本語”といふ約束がふければ、上告人原告が準備書面でのべた「約束事」とは右のことで、通信の常識である。従って本件のでとき場合では”情報が伝送される”との言方をすべきでなく、本体情報に一対一に対応した信号電流が通るか通らないかを論ずべきである。
原判決は、両者の約束事の意義を解しない、日本語のわからぬ被呼者に「あす」なる音声信号が届いても呼者のもつ情報は届かず。逆に、約束事があれば、第三者にはわからぬ数字列の信号でも本体情報を表現する。
所で原願第三図における信号専用線は一つの交換系であり CDは接続後も数字列信号(或は文字の入った番号もあるが、数字文字共に同様のバイナリコードにふるからディジタル信号の実施例では両者同等に考(られる)を送出しうる。別に原願記載にそれを否定する記事は存在しない。元当業者にとって、交換系の技術書(参考一、二)にあるでとく、交換系の接続以後は本体情報用信号が通ることを自明の前提として居るもので、本願分割部分が原願の中に存在し、その入出力端子が亦両者明示されてゐる、交換系とは本書四~五頁の附図にBとして示す様に呼者用、被呼者用端子の間の装置であるから、本件CDの他に本体情報を交換系に結合させる装置等附加するを要しふい。
CDの入力端子から本件用信号が入れば終端局のCSのRSに於ける被呼者相応の端子 で伝達されること自明である。
尤も原願のCDは十桁の番号用信号が入れば十桁目に 印を附加する。この 印が本件用信号電流の十桁毎に挿入されるとて、CDが本体情報用信号の入力装置でふいとは言へぬ。これを使用する加入者間で、 印が入るものとの約束があればよい。丁度我々の吾 信号で空気を媒体にして通信する時、つまり話をするは、「ダカラ、さ」「なあ」「そうだら」「な」、「わ」等の間段句、詞を挿入する癖の人がある、その場合と同様である。
然し、本質的に考へるならば上告人が準備書面中に指摘したでとく原願発明に用ゐられた專用信号線は本件分割発明Aを基にして 印添加の機能αを附加したA+αの形の交換方式である。 印を添へるCDの機能は各交換局CS ヌイッチSの切替のため故Sの附加のふい場合CDの 印添加機能を除いてよい。即ち原願の信号專用線A+α中に分割発明Aが包含されてゐる。
又CD原願システムに於ける受信機能は構造的に交換用信号のみを選好受信するものではふくその用途にのみ用ゐたことは屡々のべた、これに対する端末は公知の技術で へばコンビュータ端末 がある。
又被呼者端末は被呼者相應のRS端子に附遣して当業者によって補充して考ふべきもので参考一、二の各図のでとく、当業者にとって省略するのが普通だからである。
(七) 原判決は判決に重要な影響を及す第三の判断齟齬がある。
前項に附記したでとく端末は参考一、二のでとく当業者によって補充されて、明細書をよむ習慣がある。この点原判決は30丁裏下一行より31丁を行にかけて原告の主張を摘示し四行以下に於てこれを否定してゐる。
即ち甲六号証の第1図に第2、3図を重ね合せてみれば第1図の呼者被呼者の端末がそこに記載されてゐる、と認められる 判示してゐる。然らば本願も甲三号証4-1図を仝3図と重ね合せ、前者のCD入力側を後者のしに、前者のRSのZ端子を後者のCX端子に重ね合せればよい。
甲六号証の第一図で呼者1と被呼者3とどういふ役割をするかといふと。発明者 は3をよぶためダイヤルをまわす(コラム2、27行)、被呼者3に呼出信号を送る(コラム4、6行)被呼加入者3が応答する(コラム4、11)、といふだけで後は、両者通話ができる、といふだけである。
そうすると第一図で、入力端子と出側(被呼者側)端子とを図示し 入端 ダイヤルパルスが入る、出端 呼出信号がおくられる、
出端で被呼者の応答信号がある、と書いてと何等差支へふい。つまり端末装置 印は本体交換装置に何ら必須の構成要素となってゐない。
第二図三図は文中に示す に、通話路が設定された後の動作を示す故、呼者被呼者の 印は何ら説明中に出現しない、即ち交換系の動作は入出端子間の動作で、必要ない 印は省略されてゐる、それが発明として是認されることを判決文が肯定する事は、当業者が技術水準上想像上補完して考へることを肯定したことである。即ち参考五の判例(昭和40年五〇号る件)のでとくである、それは最初から記載されたものと認められる。
従って判決文が結論に於て否定する筋道を甲六号 一、二、三図と辿ってみれば、端末は何ら必須の構成要素で 入・出端子を指摘すれ 足りてゐる 。又必要でなりから適宜省略してもよいと判決文が是認してゐる事か明らかとなり。却て原告の頭初主張の通りである。
交換系の発明の説明は入、出端子を指摘すれば端末装置を図示することは不要で、それは必須の構成要素とはふらぬのが当業者 経験習慣則のごとを通念である。
本件分割の原発明の第3図(甲二号証3-3図)にあって、端末 印は呼者 被呼者 失い、点線を似て、交換装置入、出端子と結 れ、 に交換系の出端子入端子を示す程度の描き方である。これによって、当該発明が未完成不完全の審理判示をうけたことなく、公告になってゐることが、何よりもての通念を証明してゐる。
(八) これを要するに、分割発明の入端子はCDの入力側で、原願図面ではレヂスタRを介して呼者Uの端末に連る。RはUの代行者で短縮ダイヤルの原理で、相手番号を送出するのだから。義に呼者Uを位置させることは、極めて自然である。本件用信号はCDに入力されもの信号電流はCDより交換装置に入る。
CD及び信号電流のルートは、分割発明にあっては、交換用信号電流と本件用信号電流に使用され、原願発明に於ては、後者の用途を制限して前者のみとした、用途の違は実質的同一性に反しない。
以上